これまで個人しか購入できなかった「個人向け国債」が、2026年12月募集分(2027年1月発行分)から一部の法人にも販売対象を広げ、「個人向け国債プラス」としてリニューアルされます。中小企業にとっては、余裕資金の安全性と流動性を重視した運用先の選択肢がひとつ増えることになります。

これまで法人の余裕資金の置き場所といえば、普通預金・定期預金が中心でした。低金利が続いていた時期は選択肢の違いがそれほど意識されませんでしたが、金利のある時代を迎えつつある今、「資金をいつ使う予定か」に応じて置き場所を使い分ける発想がこれまで以上に重要になっています。本記事では、認定経営革新等支援機関の立場から、個人向け国債プラスの制度概要と、余裕資金運用への活用の考え方を詳しく解説します。

第1章|対象となる法人と具体的な商品内容は?

販売対象となるのは、金融商品取引法上の「一般投資家」にあたる法人等です。具体的には、資本金5億円未満の非上場株式会社や合同会社、合資会社、合名会社のほか、医療法人、税理士法人なども含まれます。一方、上場会社や資本金5億円以上と見込まれる株式会社、金融機関などの「特定投資家」は対象外です。

区分 該当する法人等(主な例)
販売対象となる法人等(一般投資家) 非営利法人(一般社団法人、一般財団法人、学校法人、医療法人、管理組合法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人、宗教法人、税理士法人など)、非上場法人(非上場株式会社〈資本金5億円未満〉、合同会社、合資会社、合名会社)、その他(マンション管理組合など)
販売対象外(特定投資家) ①国 ②日本銀行 ③適格機関投資家(個人以外)(金融商品取引業者、投資法人、銀行、保険会社、信用金庫、労働金庫、農林中央金庫、短資会社、金融庁長官へ届出を行った信用協同組合、金融庁長官が指定する農業協同組合など) ④内閣府令で定める法人(特殊法人・独立行政法人、特定目的会社、資本金5億円以上と見込まれる株式会社、上場株式会社、外国法人など)

(引用)財務省『個人向け国債の販売対象となる法人等』

中小企業の多くが該当する「資本金5億円未満の非上場株式会社」が明確に対象に含まれている点が、今回のリニューアルの実務上のポイントです。自社がどちらに該当するかは資本金の額でおおむね判断できますが、合併・増資などで資本金が変動した場合は、購入のタイミングで改めて要件を確認するとよいでしょう。

第2章|商品内容は個人向け国債と同じ

商品内容は従来の個人向け国債と変わらず、「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類です。それぞれの特徴は次のとおりです。

  • 変動10年:実勢金利の動向を反映して、半年ごとに適用利率が見直されるタイプ。金利上昇局面では受取利子が増える可能性がある一方、下落局面では減る可能性もあります。
  • 固定5年:発行時に決まった利率が、5年間変わらず適用されるタイプ。将来の受取額を見通しやすいのが特徴です。
  • 固定3年:固定5年と同様に発行時の利率が満期まで変わりませんが、期間が3年とやや短く設定されています。

いずれも最低1万円から1万円単位で購入でき、購入金額の上限はありません。発行後1年を経過すれば中途換金も可能ですが、その際は直前2回分の利子相当額が差し引かれる点には注意が必要です。

第3章|余裕資金の運用先としてどう活用する?

中小企業では、すぐには使わないものの元本を大きく減らしたくない資金の置き場所に悩むことがあります。個人向け国債プラスは額面で償還され、発行後1年を経過すれば中途換金できるため、安全性を重視する資金の運用先として検討しやすい商品です。

① 元本の安全性を重視した資金の置き場所になる

国が発行する債券であるため、株式や投資信託などと比べて価格変動のリスクは限定的です。「数年以内に使う予定はないが、大きく減らすことは避けたい」といった性質の資金——例えば、将来の設備投資や納税資金の積み立てなど——の置き場所として検討しやすい商品といえます。

② 普通預金よりも有利な利回りが期待できる場合がある

金利のある時代を迎えつつあるなか、普通預金の金利は依然として低水準にとどまっています。固定5年・固定3年であれば発行時点の利率があらかじめ確定するため、普通預金に置いたままにするよりも有利な利回りが期待できる場合があります。ただし、将来の金利動向によっては、変動10年を選ぶか固定タイプを選ぶかで結果が変わってくるため、資金の性質や自社の金利見通しに応じて商品を選ぶ視点が重要です。

③ 「いつ使うか」で置き場所を使い分ける

余裕資金のすべてを個人向け国債プラスに集中させるのではなく、「近いうちに使う予定の資金」は普通預金や当座預金で流動性を確保し、「当面使う予定のない資金」の一部を個人向け国債プラスに振り向けるなど、資金使途に応じた使い分けを意識することが大切です。

第4章|活用にあたっての注意点

① 1年以内は原則として換金できない

発行から1年を経過するまでは、原則として中途換金ができません。近い将来に使う可能性がある資金を充ててしまうと、いざという時に資金が足りなくなるおそれがあります。あくまで当面使う予定のない余裕資金に限定して活用することが基本です。

② 中途換金時には直近利子相当額が差し引かれる

1年経過後の中途換金では元本保証があるものの、直近1年分に相当する利子が差し引かれます。満期まで保有する場合と比べて実質的な利回りが下がる点は、あらかじめ理解しておく必要があります。

③ 金融機関によって販売開始時期が異なる可能性がある

制度上は2026年12月募集分から法人への販売対象が広がりますが、実際の取扱いは金融機関ごとの対応状況によって異なる可能性があります。購入を検討する際は、取引のある金融機関に事前に確認しておくと安心です。

まとめ・ご相談案内

個人向け国債プラスの登場によって、中小企業の余裕資金運用には新たな選択肢が加わります。普通預金だけに偏らず、資金をいつ使うのかを整理したうえで、安全性・収益性・流動性のバランスを考えながら活用を検討するとよいでしょう。

「自社の余裕資金のうち、どの程度を運用に回せるか整理したい」「個人向け国債プラスと他の運用先(定期預金・投資信託など)を比較検討したい」「資金繰り計画全体を見直したうえで運用方針を相談したい」——そんな方は、ぜひお早めに私どもへご相談ください。認定経営革新等支援機関として、資金繰り・資産運用のご相談はもちろん、経営改善計画書の作成、優遇金利での資金調達まで、幅広くサポートいたします。

まずはお気軽にお問い合わせください。自社に合った余裕資金の活用方法を、一緒に考えていきましょう。