2026年も折り返し地点を迎えました。暦年では上半期が終了し、3月決算の企業は第1四半期を終えて、上期の着地が少しずつ見え始める時期です。

そして今年の下半期は、例年とは違う「特別な後半戦」になります。社会保険の適用拡大、インボイス制度の経過措置の見直し、最低賃金の改定という、企業経営に直結する制度変更が10月に集中するのです。加えて、日本銀行が利上げ局面に入り、物価・人件費の上昇も続いています。

本記事では、①上半期の業績をどう振り返るか、②下半期の経営計画をどう立てるか、③今から動ける節税シミュレーション、の3本立てで、中小企業の経営者・経理担当者が「夏のうちに」確認しておきたいポイントを整理します。

2026年上半期の経営環境を振り返る

まず、自社の数字を見る前に、上半期の経営環境を押さえておきましょう。下半期の計画は「外部環境の変化」を前提に立てる必要があるからです。

今年の上半期を象徴するキーワードは、次の3つです。

金利の上昇: 日本銀行は6月の金融政策決定会合で追加利上げに踏み切り、政策金利は1.0%となりました。借入金のある企業にとっては、支払利息の増加が現実の負担として効いてくる局面に入っています。

賃上げの定着: 2026年の春闘でも高水準の賃上げが相次ぎ、大幅な賃上げは3年連続となりました。人材確保の観点からも、賃金を上げざるを得ない流れが続いています。

物価・仕入コストの上昇: 原油価格や為替の動向を背景に、仕入や経費の上昇も続いています。価格にどこまで転嫁できているかが、利益を左右します。

「金利・人件費・仕入」の3つが同時に上がる――これが2026年上半期の経営環境です。この前提を踏まえて、自社の数字を振り返っていきましょう。

業績の中間レビュー — 数字でつかむ「上期の着地」

決算は、終わってから振り返るものではなく、着地が見えた時点で手を打つものです。特に利益が出そうな年は、決算3ヶ月前に動けるかどうかで、打てる対策の数が大きく変わります。

上半期が終わったいま、ぜひ次のチェックリストで自社の状況を点検してみてください。

  • 粗利率の推移を前年同期・計画と比べる: 売上が伸びていても、仕入や外注費の上昇で粗利率が落ちていないかを確認します。
  • 固定費の増加幅を把握する: 特に人件費と支払利息は、今年は増えやすい項目です。
  • 資金繰り表を最新化する: 金利上昇局面では、借入条件の見直し余地がないかもあわせて確認しましょう。
  • 中間納税(予定納税)額を確認する: 前年実績ベースの納税額が、今期の実態と合っているかをチェックします。

そのうえで、「利益が出そう」なのか「赤字気味」なのかで、下半期の初動は変わります。利益が出そうなら、第4章で触れる節税策を早めに仕込む。赤字気味なら、コスト構造の見直しと資金繰りの確保を優先する。着地の方向性を早めに見極めることが、下半期の打ち手につながります。

下半期の経営計画 — 2026年10月「制度変更ラッシュ」への備え

ここからが今年の本題です。2026年10月には、企業の人件費・経理実務に直結する制度変更が一気に施行されます。夏のうちに準備しておきたい3点を整理します。

① 社会保険の適用拡大(106万円の壁の撤廃)

2026年現在、政府の年金制度改正において、パート・アルバイトが社会保険に加入する要件である「月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)」の将来的な撤廃に向けた本格的な議論が進んでいます。 

今後、企業規模に応じた段階的な適用拡大(最終的には全企業を対象とする方向)が予定されています。自社の従業員規模を確認し、国会での成立動向を見据えながら、今のうちから準備スケジュールを想定しておくことが重要です。

② インボイス制度の経過措置の見直し(80%→70%へ)

免税事業者からの仕入れについて一定割合の控除を認める「経過措置」が、令和8年度税制改正で見直されました。2026年10月以降、控除割合が80%から70%に引き下げられます。

その後のスケジュールは以下のとおりです。

期間(令和) 期間(西暦) 控除割合
令和8年10月〜令和10年9月 2026年10月〜2028年9月 70%
令和10年10月〜令和12年9月 2028年10月〜2030年9月 50%
令和12年10月〜令和13年9月 2030年10月〜2031年9月 30%
令和13年10月以降 2031年10月以降 0%(廃止)

当初は2029年9月で終了する予定でしたが、2031年9月まで延長されました。引き下げのペースが緩やかになった一方で、対応が長期にわたる点に注意が必要です。

実務上は、10月をまたぐ取引の消費税計算や、会計ソフトの税区分設定の更新が必要になります。免税事業者の取引先がいる場合は、取引条件やインボイス登録の依頼を含め、下半期のうちに方針を整理しておきましょう。

③ 最低賃金の改定

2026年度の最低賃金は、今夏に引き上げ額の目安が示され、10月から順次適用される見込みです。近年は過去最大級の引き上げが続いており、今年も大幅な改定が予想されています。

時給で働く従業員がいる企業は、改定後の時給で人件費がどれだけ増えるかを試算し、価格や勤務シフトへの反映を計画に織り込んでおく必要があります。

金利上昇を踏まえた設備投資・借入判断

加えて、金利上昇局面では、設備投資や借入のタイミングの判断も重要になります。「金利が上がる前に」という発想だけでなく、投資の回収計画と返済負担を冷静に見比べることが大切です。

下半期からできる節税シミュレーション

利益が出そうな年こそ、下半期のうちに節税策を検討する価値があります。代表的な選択肢を確認しておきましょう。

  • 少額減価償却資産の特例(40万円未満に拡充): 令和8年度改正で、一括経費にできる上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられました。パソコンや業務機器の更新を、この特例が使える範囲でまとめて検討するのも一手です。
  • 賃上げ促進税制(中小企業向け): 従業員の給与を増やした場合、その増加額の一定割合を法人税から控除できます。大企業向けは廃止された一方、中小企業向けは重点化されています。賃上げを計画しているなら、控除額を事前に試算しておきましょう。
  • 経営セーフティ共済・小規模企業共済: 掛金を活用した節税と、将来への備えを両立できる制度です。
  • 決算賞与・前倒し投資: 着地利益を踏まえ、必要な投資や賞与を計画的に前倒しする方法もあります。

ただし、これらは「自社にどれが、いくら効くか」を個別に試算してはじめて意味を持つものです。数字を入れたシミュレーションなしに動くと、資金繰りを圧迫したり、想定した効果が出なかったりすることもあります。判断に迷ったら、決算前の早い段階で顧問税理士にご相談ください。

まとめ|下半期は「夏のうちの準備」が分かれ道

2026年の下半期は、10月に制度変更が集中する特別な後半戦です。社会保険の適用拡大(賃金要件の撤廃)、インボイス経過措置の見直し、最低賃金の改定――いずれも、施行されてから慌てるのではなく、夏のうちに影響を試算し、準備を進めておくことが大切です。

特に社会保険については、自社の従業員規模によって「いつから対象になるか」が異なります。まず自社の状況を確認し、対象となる時期に向けた準備スケジュールを立てることが重要です。

「自社にどの改正が、どれくらい影響するのかわからない」「対応の優先順位をつけたい」「節税策を具体的にシミュレーションしたい」という方は、ぜひ一度、私どもにご相談ください。