はじめに

3月決算法人の経営者・経理担当者の皆さま、決算準備は順調に進んでいますか?

2026年3月決算は、税制改正の影響が大きく、早めの準備が成功の鍵となります。特に防衛特別法人税の導入を見据えた税効果会計の見直しや、賃上げ促進税制の活用ラストチャンスなど、押さえるべきポイントが多数あります。

本記事では、決算前の確認事項、節税対策のラストチャンス、棚卸準備のポイントを実務に即して解説します。

2026年3月決算で押さえるべき税制改正

防衛特別法人税への対応が必須

2026年4月1日以降に開始する事業年度から、防衛特別法人税が導入されます。これは法人税額に4%を上乗せする付加税で、3月決算法人の場合、2027年3月期から課税対象となります。

今期(2026年3月期)で対応すべきことは、税効果会計における実効税率の見直しです。従来の約30.62%から、2027年3月期以降は約31.52%に上昇します。この税率変更は「公布日ベース」で認識する必要があるため、2026年3月期決算で繰延税金資産・繰延税金負債を新実効税率で再計算し、差額を法人税等調整額として計上しなければなりません。

計算を誤ると財務諸表に重大な影響を及ぼすため、税理士と連携して早期に対応しましょう。

賃上げ促進税制の活用は今がチャンス

中小企業向け賃上げ促進税制は、2026年度で教育訓練費による上乗せ措置が廃止される見込みです。現行制度では、給与増加率1.5%以上で最大45%の税額控除が受けられますが、今後は縮小される可能性が高いため、今期が活用のラストチャンスです。

要件を満たしているか、以下の点を確認しましょう。

  • 雇用者給与等支給額が前年度比1.5%以上増加しているか
  • 教育訓練費を前年度比10%以上増加させているか(上乗せ措置適用の場合)

決算前に給与増加率を試算し、要件未達の場合は決算賞与の支給も検討してください。

中小企業経営強化税制は2027年3月末まで延長

設備投資を予定している企業には朗報です。中小企業経営強化税制の適用期限が2027年3月31日まで延長されました。対象設備を取得すると、即時償却または10%の税額控除を選択できます。

3月末までに設備を取得・事業供用すれば、今期の決算で大きな節税効果が得られます。ただし、事前に「経営力向上計画」の認定取得が必要なため、2月中に申請手続きを開始することをおすすめします。

決算前の確認事項チェックリスト

決算準備で漏れを防ぐため、以下のチェックリストを活用してください。

資産・負債の残高確認

現金・預金:実残高と帳簿残高の一致を確認
売掛金・買掛金:取引先との残高照合を実施
受取手形・支払手形:期日・金額の確認
固定資産:実在性確認と減損の兆候チェック

特に売掛金は、回収不能な債権がないか精査し、必要に応じて貸倒引当金を計上しましょう。

税効果会計の見直し

前述の通り、2026年3月期決算では新実効税率(31.52%)を用いた繰延税金資産・負債の再計算が必須です。また、繰延税金資産の回収可能性についても、経営環境の変化を踏まえて再評価してください。

引当金の計上

賞与引当金:期末在籍従業員への支給見込額
退職給付引当金:計算基準の確認と最新データへの更新
貸倒引当金:債権の回収可能性の個別評価

決算賞与を支給する場合、翌期1ヶ月以内支給・全員への通知・損金経理の3要件を満たせば、当期の損金に算入できます。

期末日をまたぐ取引の処理

売上・仕入は「納品基準」または「検収基準」に基づき、期末日時点で取引が完了しているか厳格に判断してください。3月31日をまたぐ取引の計上ミスは、税務調査で指摘されやすいポイントです。

また、未収収益(利息・家賃等)や未払費用(光熱費・通信費等)の計上漏れがないか確認しましょう。

節税対策のラストチャンス

決算までに実行できる節税策をご紹介します。

費用計上による節税

決算賞与の支給は即効性のある節税策です。支給額が確定し、全従業員に通知した上で、翌期1ヶ月以内に実際に支給すれば損金算入が認められます。

修繕費の未払計上も有効です。3月末時点で修繕工事が完了している場合、請求書未到着でも合理的に見積もった金額を未払計上できます。

少額減価償却資産の特例(30万円未満の資産を一括損金算入)は、2026年度改正で40万円未満に拡大される見込みです。パソコンや備品の購入を予定している場合、3月中の取得・事業供用で節税効果を得られます。

設備投資による節税

前述の中小企業経営強化税制を活用すれば、数百万円規模の設備投資でも大きな節税効果があります。たとえば、500万円の機械装置を購入した場合、即時償却を選択すれば全額を当期の損金に算入でき、税額控除を選択すれば50万円(10%)の法人税を直接減額できます。

ただし、経営力向上計画の認定には1ヶ月程度かかるため、2月中の申請開始が必須です。

その他の節税策

倒産防止共済(経営セーフティ共済)の掛金は全額損金算入できます。3月中に年払い(最大240万円)すれば、当期の大きな節税効果が得られます。

短期前払費用の特例も活用しましょう。向こう1年分のサービス費用(家賃、保険料、クラウドサービス利用料など)を3月末までに前払いすれば、当期の損金に算入できます。

棚卸の準備と実施のポイント

正確な決算のためには、精度の高い棚卸が不可欠です。

2月中に完了すべき準備

  • 棚卸実施日の決定(通常3月31日)
  • 担当者の選定と役割分担の明確化
  • 棚卸表(カウントリスト)の作成
  • 倉庫・在庫保管場所の整理整頓

商品マスタや品番を最新化し、現場で迷いが生じないようにしておくことが重要です。

実地棚卸のチェックポイント

実施時はダブルチェック体制(二人一組で確認)を構築し、カウント漏れを防ぎましょう。また、未検品商品と検品済み商品を明確に区分し、滞留品・陳腐化品・不良品は別管理してください。

棚卸後は、帳簿在庫と実地在庫の差異を分析します。差異が大きい場合は原因を究明し、滞留在庫については評価損の計上を検討しましょう。

棚卸精度を高めるコツ

日常的な在庫管理の徹底が最も重要です。可能であれば月次棚卸を実施し、期末棚卸での差異を最小化しましょう。在庫管理システムの導入や、ABC分析による重点管理も効果的です。

決算準備で失敗しないための注意点

よくあるミスと対策

期末日をまたぐ売上・仕入の計上ミス
→ 納品基準・検収基準を厳格に適用

税効果会計の計算ミス
→ 新実効税率(31.52%)への更新を確認

棚卸資産の評価方法の誤り
→ 低価法適用時の時価評価を正確に

引当金の計上漏れ
→ 賞与・退職給付・貸倒引当金を見直し

税理士との連携

決算前(2月中旬推奨)に税理士と打ち合わせを行い、疑問点を早期に解消しましょう。節税提案の依頼や、税制改正の影響確認も重要です。

まとめ

2026年3月決算は、防衛特別法人税を見据えた税効果会計の見直しが必須となる重要な決算です。賃上げ促進税制や中小企業経営強化税制の活用は今がラストチャンスです。

決算前の確認事項チェックリストで漏れを防止し、棚卸の精度を高めることが正確な決算の基礎となります。早めの準備と専門家との連携が成功の鍵です。