最近、海外で長年ご活躍された後日本に戻られてきた方の相続税申告が増えてまいりました。その場合、お子様たちはそのまま海外に住まわれている方が多く、相続人の中に海外に住んでいる人がいるというケースが目立つようになってきました。

相続人の中に海外に居住する人がいた場合、どのようなことを知っておけばよいでしょうか。

1.相続人が海外に居住している場合の相続手続

故人の預金の解約や不動産の名義変更(相続登記)などの手続きでは、遺産分割協議書とあわせて「印鑑証明」の提出が必要です。相続登記では不動産を相続した人の「住民票」の提出も必要になります。

ところが、相続人が海外に居住していて日本の住民登録を抹消している場合は、これらの書類を準備することができません。海外在住の相続人は、これらの書類の代わりとなるものを準備する必要があります。

日本では、契約するときに多くの場合で印鑑が必要となります。海外では同じようなときにサイン(署名)をします。

海外在住の相続人は、現地の在外公館(大使館・領事館)で「サイン証明(署名証明)」を受けて、自分のサインを印鑑の代わりに使用できるよう手続きをします。

サイン証明(署名証明)を受けるには、遺産分割協議書を現地の在外公館に持参します。係官の前で遺産分割協議書にサインすると、在外公館の発行する証明書が綴じ込まれ、サインが本人のものであることが証明されます。

2.海外の相続人も日本の相続税申告が必要です

遺産を受け取った相続人は、海外に居住していても日本の相続税が課税され、申告が必要となります。

亡くなった被相続人が保有していた財産であれば、原則として、日本国内の財産だけでなく海外の財産についても課税の対象になります。

ただし、被相続人と相続人の両方が10年以上海外に居住している場合は、被相続人の国内財産のみ課税の対象となり、海外財産は対象になりません。

3.スムーズな相続手続きのために遺言書の作成をお勧めします

相続人が海外に居住している場合は、遺産相続の手続きは通常よりも複雑になります。

海外では印鑑証明や住民票が取得できないため、代わるものとしてサイン証明(署名証明)や在留証明を取得します。これらの書類を取得するときは、在外公館に直接出向いて申請する必要があります。
在外公館も場所が限られているため、サイン証明を取得するには一苦労となります。

相続人が海外にいる場合は、専門家に相談して相続の手続きを進めるという方法もあります。また、ご自身の相続人になる見込みの人が海外に住んでいる場合は、遺言を作成しておくことで遺産相続がスムーズに進みます。

当社では遺言書作成のご支援も致しますのでお気軽にご相談くださいませ。