物価高や人件費、エネルギーコストの上昇が続くなか、価格転嫁ができる企業とできない企業で収益力の差が広がっています。価格転嫁は、単なる値上げではなく、事業を継続するための重要な「経営判断」です。

本記事では、認定経営革新等支援機関の立場から、価格転嫁の実態と、今すぐ取り組める3つの実務アクションを、わかりやすく解説します。

第1章|数字で見る「価格転嫁」の実態と危機

指標 数値 出典・調査期間
2025年度 全国企業倒産 1万425件 帝国データバンク調べ(2025年4月〜2026年3月)
物価高倒産 963件 帝国データバンク調べ(2025年4月〜2026年3月)
人手不足倒産 442件 東京商工リサーチ調べ(2025年4月〜2026年3月)
価格転嫁率 54.2% 中小企業庁調べ(2026年3月調査)
労務費の転嫁率 50.0% 中小企業庁調べ(2026年3月調査)

中小企業の価格転嫁率は54.2%にとどまっています。労務費の転嫁率は**2期連続で50.0%**と足踏みしており、依然としてコスト上昇分の多くを企業が自社で負担し、利益を削っているのが実態です。転嫁できない状態が続くと、利益が残りにくくなり、数年後の資金繰りや人材確保力に大きな差となって表れる可能性があります。

第2章|なぜ、価格転嫁が進まないのか

① 取引先に言い出しにくい構造

売上の大半を特定の発注元に依存している場合、「値上げを申し出たら取引を減らされるのではないか」という不安から、交渉に踏み切れないケースがあります。

② コスト上昇を数値で説明できていない

「原材料が上がったので」という説明だけでは、交渉の根拠として不十分です。何が、どれだけ上がったのかを客観的に数字で示せないことが、交渉を難しくしています。

第3章|交渉を後押しする法改正(2026年1月に施行済み)

**取適法(中小受託取引適正化法)**は、発注者と受注者の対等な関係に基づき、価格転嫁と取引適正化を図るための法律です。価格協議に応じない一方的な代金決定などは問題となり得るため、受注側の中小企業が価格交渉を進める際の後押しになります。

  • 協議に応じない一方的な代金決定の禁止
  • 手形払等の禁止
  • 取引条件の明示
  • 行政による違反行為の取り締まり など

※適用対象は、企業規模や取引内容などによって異なります。

第4章|今すぐ取るべき3つの実務アクション

① コスト増加を数値で「見える化」する

原材料費、電気代、燃料費、人件費などの上昇額を整理し、過去の数値と比較しましょう。「どの費用が、いつから、どれだけ上がったのか」を一覧化することで、交渉時の具体的な根拠資料になります。

② 「段階的」に交渉する

一度に大幅な値上げを求めるのではなく、「今回は〇%、次回更新時に再見直し」といった段階的な交渉も有効です。今後のコスト変動を見据えて、定期的に価格を見直すルールを取引先と設けておきましょう。

③ 「価値維持のための改定」と伝える

価格改定は、単なる値上げではありません。「品質管理を維持するため」「安定供給を続けるため」「必要な人材を確保するため」など、取引先にとってもメリットのある改定であることを丁寧に説明しましょう。

まとめ・ご相談案内

数字で現状を整理し、段階的な交渉と定期的な価格見直しを進めましょう。価格転嫁ができず手遅れになる前に、ぜひご相談ください。

「自社のコスト上昇額を整理し、交渉資料を作りたい」「取適法を踏まえた交渉の進め方を知りたい」「価格改定のタイミングや伝え方を相談したい」——そんな方は、ぜひお早めに私どもへご相談ください。認定経営革新等支援機関として、経営改善計画書の作成はもちろん、各種補助金申請の支援、優遇金利での資金調達まで、幅広くサポートいたします。

まずはお気軽にお問い合わせください。利益を守るための価格転嫁を、一緒に進めていきましょう。