企業経営者の財産の多くを占めるのが「自社株」です。そのため、贈与・相続や事業承継の場面では、自社株の評価額がいくらになるのかが重要になります。
自社株の評価額は、類似業種比準価額方式、純資産価額方式、またはこれらの併用方式で計算されます。このうち類似業種比準価額方式は、国税庁が公表する「業種目別株価」に基づいて行われます。本記事では、6月に公表された業種目別株価をもとに、認定経営革新等支援機関の立場から、最新の類似業種比準価額の動向をご紹介します。
第1章|類似業種比準価額の計算方法をおさらい
自社株評価は会社の規模に応じ、原則として次の方法で評価します。
- 大会社:類似業種比準価額(選択により純資産価額でも評価可能)
- 中会社:類似業種比準価額 × L + 純資産価額 ×(1−L)。Lの割合は中会社の大=90%、中=75%、小=60%(選択により純資産価額でも評価可能)
- 小会社:純資産価額(選択により「類似業種比準価額×50%+純資産価額×50%」で評価可能)
このうち類似業種比準価額は、類似業種の「株価」に、配当・利益・簿価純資産の3要素の比率を掛け合わせ、勘酌率(大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5)を乗じて計算します。なお、類似業種の株価は、業種目別に「当月」「前月」「前々月」「前年平均」「当月以前2年間の平均」のうち最も低い株価を採用します。
第2章|令和8年分の株価動向(大分類)
業種目の「大分類」について、「前年平均株価(6年平均)」と今回公表された「前年平均株価(7年平均)」を比較すると、多くの業種で7年平均のほうが高い傾向にあります。主な業種の増減率は次のとおりです。
| 業種目(大分類) | 6年平均 | 7年平均 | 増減率 |
| 建設業 | 435 | 579 | +33% |
| 製造業 | 463 | 475 | +3% |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 488 | 488 | 0% |
| 情報通信業 | 783 | 795 | +2% |
| 運輸業、郵便業 | 359 | 444 | +24% |
| 卸売業 | 533 | 507 | −5% |
| 小売業 | 558 | 679 | +22% |
| 金融業、保険業 | 323 | 421 | +30% |
| 不動産業、物品賃貸業 | 380 | 558 | +47% |
| 専門・技術サービス業 | 456 | 527 | +16% |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 668 | 686 | +3% |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 780 | 907 | +16% |
| 教育、学習支援業 | 509 | 752 | +48% |
| 医療、福祉 | 455 | 406 | −11% |
| サービス業(ほかに分類されないもの) | 926 | 804 | −13% |
| その他の産業 | 532 | 574 | +8% |
建設業(+33%)、運輸業・郵便業(+24%)、小売業(+22%)、金融業・保険業(+30%)、不動産業・物品賃貸業(+47%)、教育・学習支援業(+48%)のように、前年比で20%以上上昇した業種がある一方、医療・福祉(▲11%)やサービス業(他に分類されないもの)(▲13%)のように下落した業種もあります。業種ごとの確認が重要です。
第3章|30%以上上昇した業種を詳しく見る
特に大きく上昇した3業種を見てみましょう。
- 建設業(+33%):各年の前年平均は右肩上がりで、令和8年1・2月の株価はさらに上昇し、令和5年の前年平均の2倍以上の水準になっています。
- 不動産業、物品賃貸業(+47%):全体に上昇傾向で、特に中分類の「92:不動産取引業」と「93:不動産賃貸業・管理業」が上昇しています。
- 教育、学習支援業(+48%):大きく上昇している業種の一つです。
背景には、日経平均株価が令和7年後半から令和8年にかけて歴史的な上昇相場を形成し、令和8年6月に初の7万円台に到達した株式市況があります。この流れが続けば、令和8年分の類似業種の株価はさらに上昇することも見込まれます。
第4章|自社株評価と事業承継税制の「2つの見直し」に注目
国税庁は「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催し、自社株の評価方法について大きな見直しを行う予定です。特に、「類似業種比準方式」が「純資産価額方式」よりも評価額が低くなる傾向を利用した「節税スキーム」に対して、厳しい目が向けられています。
また、令和9年度税制改正では、法人版事業承継税制の特例措置の「次」をどうするかにも注目が集まっています。今年は、自社株に関するこれら2つの見直しの議論が、事業承継対策に大きな影響を与えそうです。
まとめ・ご相談案内
株価の上昇局面では、業種によって自社株評価額が大きく変わる可能性があります。まずは自社が該当する業種について、最新の類似業種比準価額をもとに影響を確認し、この機会に自社株評価を見直しておくことをおすすめします。
「自社の株価が今どのくらいか知りたい」「株価上昇が承継にどう影響するか確認したい」——そんな方は、ぜひお早めに私どもへご相談ください。認定経営革新等支援機関として、自社株評価や事業承継対策を幅広くサポートいたします。