はじめに
12月は企業の経理・人事担当者にとって、年末調整と冬季賞与の支給が重なる最も多忙な時期です。特に令和7年分は税制改正により、基礎控除の引き上げ(58万円)、給与所得控除の改正(65万円)、特定扶養親族特別控除の新設(63万円)など、大きな変更があります。限られた時間の中で正確な処理を行うためには、事前の準備と確認ポイントの把握が不可欠です。
年末調整では従業員から提出された各種申告書の内容確認、1年間の給与・賞与の集計、各種控除の適用を行います。令和7年分は申告書様式が大きく変更され、「マル基配所」に新たな申告書が追加されています。また、冬季賞与の支給に際しては、適切な源泉徴収税額の計算と社会保険料の処理も並行して行わなければなりません。
本記事では、税制改正に対応した令和7年分の年末調整と冬季賞与に関する重要な確認ポイントを整理し、ミスを防ぎながら効率的に業務を進めるための実践的な情報をお届けします。期限に追われることなく、確実な税務処理を実現するためのガイドとしてご活用ください。
1. 令和7年分年末調整の重要変更点
🔴 令和7年分の最重要ポイント:大幅な税制改正
令和7年度税制改正により、年末調整に影響する重要な改正が複数実施されます。特に以下の4つの改正点は必ず押さえておく必要があります。
1-1. 基礎控除の引き上げ
📌 改正内容
合計所得金額2,350万円以下の場合の基礎控除額が10万円引き上げられ、58万円となります。
- 合計所得金額2,350万円以下:基礎控除額 48万円 → 58万円
- 合計所得金額2,350万円超~2,400万円以下:基礎控除額 32万円
- 合計所得金額2,400万円超~2,450万円以下:基礎控除額 16万円
- 合計所得金額2,450万円超:基礎控除額 0円
1-2. 給与所得控除の改正
📌 改正内容
給与収入190万円以下の給与所得控除額が一律65万円に引き上げられます。
- 給与収入190万円以下:給与所得控除額 一律65万円
- 給与収入190万円超~360万円以下:収入金額×40%-10万円
- 給与収入360万円超~660万円以下:収入金額×30%+8万円
※この改正により、給与収入のみの場合、給与収入が123万円以下なら所得税がかかりません
1-3. 特定扶養親族特別控除の新設
📌 新設される控除
居住者が19歳以上23歳未満の一定の親族等を扶養している場合、63万円を控除する特定扶養親族特別控除が新設されます。
- 対象:19歳以上23歳未満の親族(配偶者を除く)
- 控除額:63万円
- 要件:その親族等を扶養控除の対象としない場合に適用
1-4. 扶養親族等の所得要件引き上げ
📌 改正内容
扶養親族等となる所得要件が10万円引き上げられます。
- 扶養親族等の所得要件:48万円以下 → 58万円以下
- 同一生計配偶者の所得要件:48万円以下 → 58万円以下
- 源泉控除対象配偶者の所得要件:95万円以下 → 105万円以下
※給与収入のみの場合、123万円以下なら扶養親族等として扱えます
1-5. 年末調整申告書様式の変更
⚠️ 申告書が大きく変更されます
- 「マル基配所」に新申告書が追加:基礎控除申告書、配偶者控除等申告書、所得金額調整控除申告書、特定扶養親族特別控除申告書の4つが1枚の用紙に
- 基礎控除申告書の様式変更:控除額の計算での判定区分が変更
- 配偶者控除等申告書の様式変更:配偶者の所得要件の改正に伴い様式が変更
- 特定扶養親族特別控除申告書:新たに追加された申告書で、19歳以上23歳未満の扶養親族がいる場合に記入
💡 令和7年分と令和8年分の違いに注意
令和7年分の年末調整時に令和8年分のマル扶を回収する場合には、令和7年分と違いを理解し、混乱しないようにする必要があります。給与収入が123万円以下なら所得税がかからない点など、違いを従業員に丁寧に説明しましょう。
2. 年末調整の最終確認ポイント
2-1. 提出書類の最終チェック
✓ 扶養控除等申告書:配偶者・扶養親族の氏名、続柄、生年月日、個人番号の記載確認
✓ 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書:本人及び配偶者の合計所得金額見積額の妥当性確認
✓ 保険料控除申告書:生命保険料、地震保険料の控除証明書添付及び控除額計算の確認
✓ 住宅借入金等特別控除申告書:借入金年末残高等証明書の添付と適用年数の確認
⚠️ 令和7年分の重要な変更事項
- 申告書様式の大幅変更:「マル基配所」に特定扶養親族特別控除申告書が追加され、4つの申告書が1枚に
- 所得要件の変更:扶養親族等の所得要件が58万円以下(給与収入123万円以下)に引き上げ
- 基礎控除額の変更:2,350万円以下の場合、基礎控除額が58万円に引き上げ
- 新控除の追加:19歳以上23歳未満の扶養親族がいる場合、特定扶養親族特別控除(63万円)を確認
- 電子化の推進:マイナポータル連携による控除証明書の自動取得が可能
- 提出方法の統一:電子化と書面の混在は処理効率を低下させるため、可能な限り統一を推奨
2-2. 計算時の注意点
✓ 中途入社者の処理:前職の源泉徴収票の内容を正確に反映し、重複計上を避ける
✓ 給与・賞与の集計:1月1日から12月31日までの全支給額を漏れなく集計
✓ 社会保険料控除:健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の年間控除額を正確に計算
✓ 小規模企業共済等掛金控除:iDeCo、企業型確定拠出年金の掛金控除を適切に処理
📝 計算例:配偶者特別控除の適用判定(令和7年分)
納税者の合計所得金額が900万円以下、配偶者の合計所得金額が58万円超133万円以下の場合に配偶者特別控除が適用されます。配偶者の収入が給与のみの場合、年収123万円超201万円以下が対象範囲となります。
※令和6年分までは「48万円超(給与103万円超)」でしたが、令和7年分から10万円引き上げられました
📝 計算例:基礎控除額の計算(令和7年分)
【ケース】給与収入のみで年収600万円の従業員
【給与所得】600万円 – 164万円(給与所得控除) = 436万円
【合計所得金額】436万円 < 2,350万円 → 基礎控除額 58万円
※令和6年分までは基礎控除額48万円でしたが、令和7年分から10万円引き上げられました
📝 計算例:特定扶養親族特別控除(令和7年分新設)
【ケース】19歳以上23歳未満の大学生の子どもを扶養
【控除】特定扶養親族特別控除 63万円
【条件】その子どもを扶養控除の対象としない場合に適用
※令和7年分から新設された控除です。該当者がいる場合は必ず申告書への記載を確認してください
2-3. よくあるミスと対策
頻発するミスパターン(令和7年分)
- 所得要件の判定ミス:扶養親族等の所得要件が「48万円以下」から「58万円以下」(給与収入123万円以下)に変更されたことの理解不足
- 基礎控除額の計算誤り:基礎控除額が「48万円」から「58万円」に引き上げられたことを反映していない
- 特定扶養親族特別控除の適用漏れ:19歳以上23歳未満の扶養親族がいるのに、新設された控除(63万円)を適用していない
- 申告書様式の取り違え:令和7年分と令和8年分の申告書様式を混同している
- 配偶者の所得見積もり誤り:パートタイムの収入変動や年末の勤務調整を考慮していない
- 給与所得控除額の計算誤り:給与収入190万円以下の場合、一律65万円になったことを反映していない
- 障害者控除の適用漏れ:精神障害者保健福祉手帳や療育手帳の確認不足
- 2か所給与の処理忘れ:副業やアルバイト収入の申告漏れ
3. 冬季賞与の税務処理
3-1. 賞与の源泉徴収税額の計算方法
賞与からの源泉徴収税額は、前月の給与額と扶養親族等の数に基づいて「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使用して計算します。
📝 基本的な計算手順
- 賞与から社会保険料等を控除した金額を算出
- 前月の給与から社会保険料等を控除した金額を確認
- 前月給与額と扶養親族等の数から税率を決定
- (賞与-社会保険料等)×税率=源泉徴収税額
✓ 算出率表の正しい使用:甲欄・乙欄の区別を確実に行い、適切な税率を適用
✓ 前月給与額の考え方:賞与支給月の前月に支払われた給与額(支給日基準)を使用
✓ 社会保険料控除後の金額:健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料控除後の賞与額で計算
3-2. 賞与支払時の注意点
💡 特別な計算が必要なケース
前月給与の支払いがない場合:賞与額の6.126%を源泉徴収税額とします。
賞与額が前月給与の10倍超の場合:(賞与額-前月給与額×10)×20.42%+前月給与額×10に対応する税額で計算します。
✓ 年末調整対象者の賞与は年末調整で精算されることを従業員に周知
✓ 12月支給の賞与も年末調整の対象となることを確認
✓ 退職者への賞与は年末調整の対象外となることに注意
3-3. 社会保険料との関係
✓ 保険料率の適用:健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料を賞与額に応じて徴収
✓ 標準賞与額の上限:健康保険573万円、厚生年金150万円(年度累計)の上限を確認
✓ 賞与支払届の提出:支払日から5日以内に年金事務所等に提出
✓ 40歳以上の介護保険料:該当者からは介護保険料も併せて徴収
4. 源泉徴収票の準備
4-1. 作成スケジュール
✓ 年末調整完了:12月末までに年末調整計算を完了
✓ 源泉徴収票作成:年末調整完了後、速やかに作成開始
✓ 従業員への交付:翌年1月31日までに全従業員に交付
✓ 税務署等への提出:翌年1月31日までに法定調書合計表と併せて提出
4-2. 記載内容の確認ポイント
📝 源泉徴収票の主要記載項目(令和7年分)
- 支払金額:給与・賞与の年間支給総額(非課税通勤手当等は除く)
- 給与所得控除後の金額:支払金額から給与所得控除額を差し引いた金額
- 所得控除の額の合計額:基礎控除、扶養控除、社会保険料控除等の合計
- 源泉徴収税額:年末調整後の確定した所得税額
- 社会保険料等の金額:健康保険料、厚生年金保険料等の年間控除額
※令和7年分は、基礎控除額や給与所得控除額の改正、特定扶養親族特別控除の新設により、控除額の合計が変更になるケースが多くなります
⚠️ 令和7年分源泉徴収票の記載上の注意
令和7年分は税制改正により基礎控除額(58万円)、給与所得控除額、特定扶養親族特別控除(63万円)など、控除額が変更・新設されています。源泉徴収票の各欄の金額が正しく計算されているか、特に注意してチェックしてください。
4-3. 電子交付・マイナンバー対応
💡 電子交付の要件
源泉徴収票の電子交付を行う場合は、従業員の同意取得が必要です。また、電子交付を行った場合でも、従業員が書面での交付を求めた場合は書面で交付する必要があります。
✓ マイナンバーの記載は税務署提出用のみで、本人交付用には記載しない
✓ 電子交付システムのセキュリティ対策を適切に実施
✓ 電子交付の実施状況を適切に記録・管理
5. 12月の実務スケジュール(令和7年分対応版)
| 期限 | 主要業務 | チェックポイント |
| 12月上旬 | ・年末調整書類の回収完了
・新申告書様式の確認 ・冬季賞与の計算・準備 |
・提出書類の記載内容確認
・特定扶養親族特別控除申告書の確認 ・控除証明書等の添付確認 ・賞与計算の事前準備 |
| 12月中旬 | ・冬季賞与の支給
・年末調整計算の実施 ・新控除額の算出 |
・賞与の源泉徴収税額計算
・社会保険料の正確な徴収 ・賞与支払届の提出準備 ・基礎控除・特定扶養親族特別控除の正確な計算 |
| 12月下旬 | ・年末調整の最終確認
・過不足額の精算処理 ・税制改正内容の反映確認 |
・計算結果の複数人でのチェック
・基礎控除58万円の反映確認 ・特定扶養親族特別控除63万円の反映確認 ・還付・徴収額の確認 ・12月給与での精算処理 |
| 翌年1月 | ・源泉徴収票の交付
・法定調書の提出 |
・源泉徴収票記載内容の最終確認
・税制改正内容の正しい反映確認 ・法定調書合計表の作成 ・提出期限(1月31日)の遵守 |
🕒 重要な期限管理(令和7年分)
年末調整関連業務は法定期限が設定されているため、余裕をもったスケジュール管理が不可欠です。令和7年分は税制改正により申告書様式や控除額が大きく変更されているため、計算ミスがないよう十分な時間を確保し、複数人でのチェック体制を構築してください。特に、源泉徴収票の交付期限(翌年1月31日)は厳守する必要があります。
6. 申告書記入ガイド(令和7年分)
令和7年分の年末調整では、税制改正により申告書の様式が大きく変更されています。ここでは、各申告書の記入方法と重要なポイントを解説します。
6-1. 給与所得の計算方法(令和7年分改正対応)
📝 給与収入から給与所得への変換手順
年末調整の申告書記入時には、まず「給与収入」から「給与所得」を計算する必要があります。令和7年分は給与所得控除額が改正されているため注意が必要です。
| 給与収入(年収) | 給与所得の計算式 | 給与所得控除額 |
| 190万円以下 | 収入金額 – 65万円 | 一律65万円 |
| 190万円超 ~ 360万円以下 | 収入金額 × 40% – 10万円 | 収入金額 × 60% + 10万円 |
| 360万円超 ~ 660万円以下 | 収入金額 × 30% + 8万円 | 収入金額 × 70% – 8万円 |
| 660万円超 ~ 850万円以下 | 収入金額 × 20% + 44万円 | 収入金額 × 80% – 44万円 |
| 850万円超 | 収入金額 – 195万円 | 195万円(上限) |
💡 計算例:年収300万円の場合
【給与収入】300万円
【計算】300万円 × 40% – 10万円 = 110万円
【給与所得】300万円 – 110万円 = 190万円
🔴 令和7年分の重要変更点
給与収入190万円以下の場合、給与所得控除額が一律65万円になりました(令和6年分までは55万円)。
これにより、給与収入が123万円以下なら給与所得は58万円以下となり、所得税がかかりません(基礎控除58万円を適用した場合)。
6-2. 基礎控除申告書の記入方法
📋 記入の流れ
- 給与所得を計算:上記の表を使って給与収入から給与所得を算出
- 給与所得以外の所得を確認:不動産所得、雑所得等があれば合算
- 合計所得金額を算出:給与所得 + その他の所得
- 判定区分を確認:合計所得金額に応じて区分A~Cを判定
- 基礎控除額を記入:判定区分に応じた控除額を記入
| 合計所得金額 | 判定区分 | 基礎控除額 |
| 2,350万円以下 | 区分A | 58万円 |
| 2,350万円超 ~ 2,400万円以下 | 区分B | 32万円 |
| 2,400万円超 ~ 2,450万円以下 | 区分C | 16万円 |
| 2,450万円超 | 区分外 | 0円(控除なし) |
6-3. 配偶者控除等申告書の記入方法
📋 記入の流れ
- 配偶者の給与収入を確認:1月~12月の見込み収入額
- 配偶者の給与所得を計算:給与収入から給与所得控除を差し引く
- 配偶者の合計所得金額を算出:給与所得 + その他の所得
- 本人の合計所得金額を確認:基礎控除申告書で計算した金額
- 控除額を判定:本人と配偶者の所得金額から控除額を判定
🔴 令和7年分の重要変更点
配偶者の所得要件が10万円引き上げられました。
- 配偶者控除:配偶者の合計所得金額が58万円以下(給与収入のみの場合123万円以下)
- 配偶者特別控除:配偶者の合計所得金額が58万円超133万円以下(給与収入のみの場合123万円超201万円以下)
| 配偶者の給与収入 | 配偶者の給与所得 | 適用される控除 |
| 123万円以下 | 58万円以下 | 配偶者控除(最大38万円) |
| 123万円超 ~ 201万円以下 | 58万円超 ~ 133万円以下 | 配偶者特別控除(最大38万円~3万円) |
| 201万円超 | 133万円超 | 控除対象外 |
6-4. 特定扶養親族特別控除申告書の記入方法(新設)
📋 記入の流れ
- 対象親族を確認:19歳以上23歳未満の親族(配偶者を除く)がいるか
- 親族の所得を確認:合計所得金額が58万円以下(給与収入のみの場合123万円以下)か
- 扶養控除との関係を確認:その親族を扶養控除の対象としないことを確認
- 氏名・続柄・生年月日を記入:対象親族の情報を記入
- 控除額を確認:1人につき63万円
⚠️ 重要な注意点
- 扶養控除との併用不可:特定扶養親族特別控除を適用する場合、同じ親族について扶養控除は適用できません
- 年齢判定:令和7年12月31日時点で19歳以上23歳未満であることが条件
- 所得要件:親族の合計所得金額が58万円以下(給与収入のみの場合123万円以下)であることが必要
💡 適用例:大学生の子どもがいる場合
【状況】20歳の大学生の子ども、年収80万円(アルバイト収入)
【給与所得】80万円 – 65万円 = 15万円 < 58万円 ✓
【年齢】19歳以上23歳未満 ✓
【適用可否】特定扶養親族特別控除 63万円を適用可能
【注意】扶養控除は適用しない
6-5. 保険料控除申告書の記入方法
📋 記入の流れ
- 生命保険料控除証明書を確認:保険会社から送付された証明書を確認
- 新旧契約を区分:平成24年1月1日以降の契約は「新契約」、それ以前は「旧契約」
- 支払保険料を記入:一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を区分して記入
- 控除額を計算:各区分ごとに控除額を計算(上限あり)
- 地震保険料を記入:地震保険料控除証明書を確認して記入
| 年間支払保険料 | 新契約の控除額 | 旧契約の控除額 |
| 2万円以下 | 支払保険料の全額 | 支払保険料の全額 |
| 2万円超 ~ 4万円以下 | 支払保険料 × 1/2 + 1万円 | 支払保険料 × 1/2 + 1.25万円 |
| 4万円超 ~ 8万円以下 | 支払保険料 × 1/4 + 2万円 | 支払保険料 × 1/4 + 2.5万円 |
| 8万円超 | 4万円(上限) | 5万円(上限) |
💡 生命保険料控除の上限額
新契約の場合、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の各区分ごとに上限4万円、合計の上限は12万円です。
6-6. 扶養控除等申告書の記入方法
📋 記入の流れ
- 控除対象扶養親族を確認:合計所得金額が58万円以下(給与収入のみの場合123万円以下)の親族
- 年齢区分を確認:一般の扶養親族、特定扶養親族(19~23歳未満)、老人扶養親族(70歳以上)を区分
- 氏名・続柄・生年月日を記入:各扶養親族の情報を記入
- 同居・別居を記入:老人扶養親族の場合、同居老親等に該当するか確認
- 障害者控除を確認:障害者手帳等を持っている場合は該当欄に記入
| 扶養親族の区分 | 年齢要件 | 控除額 |
| 一般の扶養親族 | 16歳以上19歳未満、23歳以上70歳未満 | 38万円 |
| 特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 63万円 |
| 老人扶養親族(同居老親等以外) | 70歳以上 | 48万円 |
| 老人扶養親族(同居老親等) | 70歳以上(同居) | 58万円 |
⚠️ 特定扶養親族特別控除との関係
令和7年分から、19歳以上23歳未満の親族について特定扶養親族特別控除(63万円)を適用する場合は、同じ親族について扶養控除(特定扶養親族63万円)は適用できません。どちらか一方の控除を選択する必要があります。
6-7. 所得金額調整控除申告書の記入方法
📋 対象となるケース
以下のいずれかに該当し、給与収入が850万円を超える場合に適用されます。
- 本人が特別障害者に該当する
- 年齢23歳未満の扶養親族がいる
- 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる
💡 控除額の計算式
所得金額調整控除額 = (給与収入(上限1,000万円) – 850万円) × 10%
【計算例】給与収入950万円、23歳未満の扶養親族がいる場合
(950万円 – 850万円) × 10% = 10万円
6-8. 申告書記入時の共通チェックポイント
✓ 所得金額の正確な計算:給与所得控除額の改正(65万円)を反映する
✓ 控除証明書の添付:生命保険料、地震保険料、住宅ローンの控除証明書を忘れずに添付
✓ マイナンバーの記載:本人、配偶者、扶養親族のマイナンバーを記入(初回のみ)
✓ 令和7年分と令和8年分の区別:年末調整時に翌年分の申告書を回収する場合、混同しないよう注意
✓ 記載内容の確認:氏名、生年月日、続柄などの基本情報に誤りがないか確認
📚 詳しい記入方法は国税庁の公式情報をご参照ください
各申告書の詳細な記入方法、記載例、よくある質問については、国税庁の「年末調整がよくわかるページ」で確認できます。
- 国税庁「年末調整がよくわかるページ」
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nencho/index.htm - 国税庁「令和7年分 給与所得者の扶養控除等申告書」記載例
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/mokuji.htm
7. まとめ
年末調整と冬季賞与の処理は、企業の税務コンプライアンスの根幹を成す重要な業務です。令和7年分は税制改正により、基礎控除(58万円)、給与所得控除(65万円)、特定扶養親族特別控除(63万円)、扶養親族等の所得要件(58万円以下)など、複数の重要な変更があり、適切な処理を行うためには、これまで以上に注意深い対応が求められます。
令和7年分 成功のための重要ポイント
✓ 税制改正内容の正確な理解:基礎控除58万円、給与所得控除65万円、特定扶養親族特別控除63万円、所得要件58万円以下(給与収入123万円以下)を確実に把握
✓ 申告書様式の変更対応:「マル基配所」に特定扶養親族特別控除申告書が追加された新様式への対応
✓ 事前準備の徹底:必要書類の早期回収と内容確認(特に特定扶養親族特別控除申告書)
✓ 複数人でのチェック体制:計算ミスや記載漏れの防止(特に新控除額)
✓ システムの更新確認:給与計算ソフトや年末調整システムが令和7年度税制改正に対応しているか確認
✓ 従業員への丁寧な説明:「123万円の壁」など、大きく変わった所得要件を分かりやすく説明
✓ 国税庁の情報確認:年末調整特設サイトやQ&Aの定期的な確認
✓ 令和8年分との違いに注意:令和7年分の年末調整時に令和8年分のマル扶を回収する場合、違いを理解しておく
限られた時間の中で正確な処理を実現するためには、計画的な業務進行と継続的な知識のアップデートが欠かせません。特に令和7年分は大幅な税制改正により、控除額や所得要件が大きく変更されているため、不明な点や複雑なケースについては、専門家への相談を積極的に活用し、確実な税務処理を心がけてください。
今回の税制改正は、基礎控除や給与所得控除の引き上げにより、多くの納税者の税負担が軽減される内容となっています。また、特定扶養親族特別控除の新設により、19歳以上23歳未満の扶養親族がいる世帯も支援されます。これらの改正内容を正確に理解し、従業員に丁寧に説明することで、スムーズな年末調整業務を実現できます。
今回の処理で発見した課題や改善点を記録し、来年以降の年末調整業務の効率化に活かすことも重要です。デジタル化の推進やシステムの活用により、継続的な業務改善を図り、年々スムーズな年末調整業務を実現してまいりましょう。