従業員が通勤途中や業務中に飲酒運転事故を起こした場合、企業に甚大な影響が及ぶことがあります。2022年から企業におけるアルコールチェックが法的に義務づけられ、2023年にはより厳格化されるなど、「飲酒運転を防ぐ姿勢と予防策」が企業に求められています。
本記事では、認定経営革新等支援機関の立場から、アルコールチェック義務化の概要と、企業がおこなうべき対策についてわかりやすく解説します。
第1章|飲酒運転で企業が問われる「4つの責任」
業務で使用する車の事故は、運転した従業員だけの問題ではおさまりません。従業員が飲酒運転事故を起こした場合、企業も次のような責任を問われる可能性があります。
- 刑事責任:飲酒運転のおそれがある状態で運転をさせた(認めた)場合、企業が車両等提供罪に問われる可能性があります。
- 民事責任:従業員が業務中に飲酒運転事故を起こした場合、企業も被害者に対して賠償責任を負うことがあります。
- 行政責任:運送業などでは営業停止処分を受けることがあり、行政処分となれば国土交通省のホームページで企業名や処分内容が公表されます。
- 社会的責任:安全管理や従業員管理がずさんと見られ、取引先からの信用を失い、受注が減るなどの影響が出ることもあります。
第2章|アルコールチェックの義務化とは?対象は?
アルコールチェック義務化とは、5台以上の自動車を使用する企業が、運転する従業員の酒気帯び状態を確認し、記録を保存する法的な義務です(道路交通法施行規則)。対応には次の3つが必要です。
- 安全運転管理者を選任する
- アルコール検知器を用意する
- アルコールチェックの記録を作成し、保存する
2023年12月1日から実施されており、内容は「安全運転管理者が、運転する従業員に対して酒気帯びの有無を目視等で確認するほか、アルコール検知器で確認する」「確認した内容を記録し、その記録を1年間保存するとともに、検知器を常時有効に保つ」というものです。
■ 対象となる車両・対象外
対象となる自動車は、緑ナンバーだけでなく白ナンバーの営業用車両も含み、所有権を問わないためリース車両も含まれます。ただし、従業員が通勤にのみ使用するマイカーは含まれません。
対象外となるのは、白ナンバー(乗車定員10名以下)が4台までの事業所、従業員が通勤のみに使用するマイカー、運送業の運行管理者が選任されている事業所などです。
第3章|「安全運転管理者」の選任と罰則
アルコールチェックをおこなう義務があるのは「安全運転管理者」です。次のいずれかに該当する事業所では、選任が義務づけられています。
- 乗車定員が11名以上の自家用自動車を1台以上使用している
- そのほかの自家用自動車を5台以上使用している
- (備考)原付を除くオートバイは1台を0.5台としてカウント。台数が20台以上の場合は副安全運転管理者の選任が必要
安全運転管理者を選任したら、選任や変更を15日以内に届け出る義務があります。罰則もあり、選任を怠った場合は50万円以下の罰金、選任の届け出を怠った場合は5万円以下の罰金を科されることがあります。
第4章|企業がおこなうべき「5つの措置」
義務化に対応するため、企業がおこなう必要のある措置は次の5つです。
- 安全運転管理者を選任し、届け出する
- アルコール検知器を保持する
- アルコールチェックの記録を付ける体制を構築する
- アルコールチェックの記録を保存する体制を構築する
- 飲酒運転をしない・させない意識を従業員へ徹底する
飲酒運転の禁止といった重大なルールは就業規則に明記し、社内に浸透させておきましょう。
第5章|就業規則・関連規程の整備も重要
「飲酒運転はダメ」と伝えても、ルールを守らない従業員がいるかもしれません。問題行動を抑止し、真面目に働く従業員を守るためにも、就業規則で懲戒処分の事由や程度を明確化しておくことが重要です。
また、業務中の飲酒運転を禁止しても、従業員が帰宅途中に飲酒するリスクは残ります。通勤途中の事故における企業の責任範囲を明確にするためにも、「マイカー通勤規程」として定めておくことがおすすめです。賃上げに伴う就業規則の改正時などにあわせて、関連規程に漏れがないか点検しておくと安心です。
まとめ・ご相談案内
アルコールチェックが義務化されていても、業務中の飲酒事故は発生しています。「他社のこと」とは思わず、「自社で起こったとき」を想定した対策が欠かせません。あわせて、従業員のモラルに欠ける行動やハラスメントを防ぐためにも、就業規則の見直しや関連規程の整備を進めておくことが大切です。
「就業規則やマイカー通勤規程を見直したい」「安全運転管理者の届け出や記録体制を整えたい」——そんな方は、ぜひお早めに私どもへご相談ください。認定経営革新等支援機関として、経営改善計画書の作成や各種補助金申請の支援などとあわせて、幅広くサポートいたします。